1920年代に、主にダイズ、ココナッツ、ヤシなど植物油の抽出をはじめ食品工業などで広く使われ始めました。
その他、衣料のドライクリーニング用及び金属機械部品の脱脂洗浄剤、医薬品、香料、ゴム、塗料、樹脂などの溶剤として使用されてきましたが、毒性をもつことから1970年代以降ほとんどの国で食品および医薬品での使用が禁止になりました。
現在ではフロンガス代替物質の合成原料や機械部品、電子部品の脱脂洗浄剤として主に使用されています。
また、工業用溶剤として油脂、樹脂、ゴムの溶解、染料や塗料を製造する時の溶剤、無水エタノールを製造する際に微量の残水を取り除くために使われます。
常温では無色透明の液体で、クロロホルムに似た甘い匂いがします。揮発性ですが、火を近づけても燃えず、そして水に溶けにくい性質があります。
トリクロロエチレンは代表的な地下水汚染物質であり、工場排水により土壌が汚染されると、地下水に浸透し、長期にわたり地下水汚染が続くことがあります。
トリクロロエチレンの水道水への影響
水に難溶性で自然には分解しません。金属、機械部品などの脱脂、洗浄剤、一般溶剤、塗料の希釈液等の有機合成原料として使用されている物質で土壌や海洋汚染源となり、腫瘍の発生を促進することが知られています。
製造原料及び溶剤として使用される際に大気中に、また製造工程の排水中に漏出することで水中に排出され、環境中の生物に影響を与える可能性があります。
現在、水道管には塩ビ管やポリエチレン管などの樹脂管が多く使用されるようになってきており、これらは土中埋設時に周辺土壌がトリクロロエチレンや灯油・ガソリン等で汚染されていると、管の内部までそれらを透過し水道水の水質を悪化させます。
そこで水道法では水質基準を設けて、これらの物質が水道水に混入することを取り締まっています。
そのため水道事業体が供給する水道水を飲用している方は全く心配ありませんが、個人で井戸を所有し、それを飲用に用いている場合は問題となる可能性も考えられます。
また、我が国のライフスタイルとして、入浴の頻度がきわめて高いことから、水道水からの蒸発に関して入浴時における吸入及び皮膚からの吸収を考慮すべきとのWHOの指摘もありました。
人体への影響
トリクロロエチレン等の有機塩素系溶剤の多くは発癌性等が疑われています。
これらの溶剤を高濃度に含む井戸水等を長期間飲用した場合には、健康に何らかの障害が発生する恐れがあります。
トリクロロエチレンは揮発性の液体で、呼吸による吸入、飲食を通した経口、溶液の皮膚接触により体内に吸収されます。体内に吸収されたトリクロロエチレンは全身に分布し、主に肝臓、肺、腎臓、特に脂肪組織に多く分布されます。
また、急性毒性としては、眠気、疲労感、頭痛など中枢神経系への影響が報告されており、慢性毒性としては、中枢神経系への影響の他に肝臓や腎臓への影響なども認められています。
国際がん研究機関(IARC)の評価書においても、疫学知見等に基づき、トリクロロエチレンの発がん分類がグループ2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)からグループ1(ヒトに対して発がん性がある)に見直されました。
トリクロロエチレンの除去方法
トリクロロエチレンは煮沸や浄水器によって除去できます。
煮沸で除去する場合は、10分以上煮沸させてください。短い時間ではトリクロロエチレンが除去できないので、ある程度長く煮沸させることが重要です。
浄水器で除去する場合は、カートリッジに活性炭を使用している製品を選んでください。
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